ピンクの炎 第1回 新日本映像社長に聞く その1
工藤監督:稲山さん、新しいサイトのオープンおめでとうございます。
稲山社長:ありがとうございます。
工藤:随分、カッコいいというか、お洒落なサイトになったと思うんですが、今回のサイトリニューアルの狙いは?
稲山:まあ、狙いと言うか、長く変わってなかったんで、心機一転で、新しくしてみようと(笑)。
工藤:以前のサイトと大きく変わったところは?
稲山:今までの、映画館の番組の告知だけではなく、動画の配信、グッズのショップが加わりました。
工藤:特に動画配信を始めたのは大きな変化ですね。
稲山:これは、国内というより、海外のお客さんにピンク映画を見てもらいたいという思いがあるんですよ。
工藤:国内の劇場が減って行く現状もありますものね。その中で、広く一般の人に見てもらうには、ピンク映画には色々ハードルも多い。確かに海外への展開は可能性としてアリですね。
稲山:まあ、出来る事からやっていくしかないと思っています。
工藤:国内に向けてのネットの活用は?
稲山:これからは、新作はまずネットで公開して、それから劇場へという流れもあるかもしれません。ネットなら全世界公開ですからね(笑)。
工藤:海外で人気になり、逆輸入とか。
稲山:ウチは、金をかけて大作映画を作る会社じゃないんで、アイディアで勝負ですよ(笑)。
奥:新日本映像・稲山悌二社長 手前:工藤雅典監督
工藤:「エクセス動画」という事でまず1回目の配信は何本ですか?
稲山:10本です。
工藤:その中で、どれか、お薦めは?
稲山:全部可愛い作品なんで、私の口からどれか1本と言うのは言い難いですね(笑)。
工藤:そうですか(笑)。じゃあ、まず私から。私の作品「夏の愛人 美味しい男の作り方」が入ってますね。これは、2011年の東日本大震災の直後に撮ったんですよね。稲山さんからの企画の注文で「アパートの鍵貸します」みたいなのどう?という話していて、確かその中にニューヨークの停電のシーンがあって。結局、全然違う話しになったんだけど、そのイメージで、震災後の停電の続く東京が舞台になってます。ピンク映画は企画から劇場公開までのスパンが短いので、商業映画では震災後1番早く復興のメッセージを出したと言う人もいたんですが(笑)。
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稲山:いやあ、私には全然分かりませんねえ、そんな事は。他の映画を見てないですから(笑)。
工藤:私が気になったのが、2012年公開の「つわものどもの夢のあと 剥き出しセックス、そして…性愛」。ピンクらしくない題名ですよね。
稲山:松岡邦彦監督のですね。
工藤:これって、実際の殺人を映画に撮る、いわゆるスナッフムービーをモチーフにしてるんですよね。こんな、企画よく通しましたね。
稲山:覚えてないです。
工藤:いいかげんですね、いいんですか、そんなことで(笑)。
稲山:アハハ。
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工藤:あんまりエロくはないと思うんだけど(笑)、映画通のピンクファンにはかなり評価が高かった作品ですよね。
稲山:そうですね。
工藤:一般映画に比べて、ローバジェット故に監督が比較的制限無く自由に撮れるのがピンク映画の良さだと思うんですが、この頃は一風変わった企画が多いですよね。
稲山:ちょっとダークなのが当時のエクセスのトレンドだったかもしれないですね。
工藤:2010年公開ですが、「ある歯科医の異常な愛 狂乱オーガズム」これも凄いですよね。
稲山:黒川幸則監督ですね。
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工藤:患者の歯を集めるフェチの歯医者の話しなんでけすけど、歯の撮り方がグロいというか、ショッキングですよね。黒川君はエクセスの「夜のタイ語教室 いくまで、我慢して」という映画を撮った後、しばらく監督してなくて、私が「おひとりさま 三十路OLの性」という映画を撮った時、助監督をしてくれたんですよね。
稲山:大変だって文句言ってましたよ。
工藤:そうそう、夜のシーンが多くてほとんど眠れない過酷な現場だったと思うんですけど、あるAV女優が出てたんですが、彼女がかなり神経質で、気の強い娘なんです。カラミのシーンを撮るベッドとかソファーを全部殺菌スプレーで除菌しないとカランでくれない。その除菌も黒川君がやる。そして、通り魔みたいな殺人鬼の男が、出てくるんですが、その男が人を殺すと死体にナイフでSの文字を刻むんです。その女優も殺される設定で、尻にS字の傷を特殊メークで付けなきゃならない。尻にパテを盛って血のりで色をつけるんですが、結構時間がかかってました。しかも、つながりがあるんで、何度も付けたり消したりしなきゃならない。黒川君は一日中、気の強い女優の尻と格闘してましたね。
稲山:監督はそれを見て楽しんでたんですか?
工藤:いやいや、大変だなと思って感謝してました。
稲山:本当ですか?
工藤:本当です(笑)。黒川君は2016年に「ヴィレッジ・オン・ヴィレッジ」で一般映画デビューしてますし、これから期待の監督ですね。
稲山:ああ、そうそう。瀧島弘義監督の「美尻誘惑 公衆便所のいたずら」も面白いですよ。夢想する女流作家の話です。これは、お薦めです。
工藤:瀧島君は、僕がエクセスで初めて撮った、1999年「人妻発情期 不倫まみれ」の時に稲山さんに紹介されて、色々ピンク映画についてアドバイスしてくれたんですよ。スタッフとかキャストとか。彼は、前年「三十路銀行員 極太狂い」でデビューしてましたからね。
稲山:そうでしたね。
工藤:瀧島君は凄くピュアな男で「公衆便所」という企画をもらって本当に悩んでたんですよ、撮るべきか、撮らざるべきかと。「人妻銀行員」が凄く奇麗な映画でしたからね。俺も、瀧島君に「公衆便所」とは、稲山さんも酷い人だと思ってたんです。しかし、そこから傑作が生まれるという…。分からないもんですね。
稲山:あれは、アテネフランセでも上映しましたからね。
工藤:稲山さんにとっても思い入れの深い作品の一つという事ですね。
★第2回に続く★