佐倉萌インタビュー『アンニュイでコケティッシュ ・佐倉萌のマルチな魅力』第4回
「愛くるしい瞳と、巨乳のミスマッチが男の下半身を奮い立たせる!」。エクセス作品『人妻不倫痴態 義母・未亡人・不倫妻』の2010年改題公開時にエクセスのサイトに掲載された佐倉萌の宣伝文である。佐倉萌は、その“アンニュイでコケティッシュ”な魅力で長年、ピンク映画ファンを文字通り奮い立たせてきたが、一方、映画デビュー作『雷魚』の瀬々敬久監督をはじめ、黒沢清監督、渡邊孝義監督、クロード・ガニオン監督など作家性の強い監督の作品にも出演し、映画界に異彩を放っている。今回は、そんな佐倉萌にじっくりと話を聞き、その魅力の一端を解き明かしたい。
インタビュアー 工藤雅典
第4回『エクセスの多彩な監督たちとの仕事!!』
【1.カメラ目線の芝居】
工藤:その後の出演作は、佐々木乃武良監督の『女子アナ 盗撮下半身』(1999年公開)だね。これも、コウワクリエイティブ制作かな?
佐倉:そう、コウワさんですね。主演は水原美々(女優 1975~)さんでした。
『女子アナ 盗撮下半身』ポスター
※エクセス動画にて配信中!
水原美々『女子アナ 盗撮下半身』現場スチール
工藤:水原美々さんって当時人気があったんだよね?
佐倉:チチダスミミの人ですよね。美々さんは、カメラ目線で何かを話すという事には慣れた人だったので、適役だったんですけど、私が女子アナ役で…。
工藤:先輩の女子アナだっけ?
佐倉萌『女子アナ 盗撮下半身』現場スチール
佐倉:そうそう。私は、カメラ目線で何かを話すという経験が無かったので、そこが大変でした。
工藤:相手役の男優は、山内健嗣と、岡田健一郎、久須美欽一だね。
佐倉:その当時カラむのは、だいたい吉田祐健さんか、岡田健一郎さん、竹本泰志さん。割りと続く時がありました。
『女子アナ 盗撮下半身』現場スチール
『女子アナ 盗撮下半身』現場スチール
『女子アナ 盗撮下半身』現場スチール
工藤:当時は誰がやりやすいとかあった?
佐倉:面白かったのは祐健さんですかね。祐健さんとのカラミでは、監督が“お任せで”ってなると、止めどもなくアドリブを…。
工藤:いろいろな技を繰り出してくるわけだ(笑)。
佐倉:そうですね(笑)。そういう掛け合いがとても面白かったですね。後は、なかみつ せいじさん、竹本泰志さん、千葉誠樹さんだと、慣れ親しんでいるというか、もう合いの手を打つように進むので(笑)。
『女子アナ 盗撮下半身』現場スチール
工藤:さっき、見せるカラミを意識しているという話があったけど、男優さんにカラミを任せるというだけじゃないという事があったのかな?
佐倉:あります。あります。あと、慣れてない方だとね。
工藤:ああ、逆に男優さんが慣れてない人の場合ね。
佐倉:セックスをすれば良いと思ってる人がいるので、そうじゃなくってと。たとえば、乳首を手で隠しちゃいけないとか。
工藤:なるほど、そこはちゃんと見せないとね。
佐倉:割と手厳しく、監督の見てないところでこっそりと(笑)。
工藤:なるほど、若い男優にはそういう風に指導してくれるんだ。
佐倉:たとえば、正常位で脚を持ち上げたりする時は、顔にかぶるからもう少し手をこっちとか。
工藤:やっぱり演出家的な視点があるんだね。
【2.監督のカメラワーク】
工藤:エクセス作品で次に出演したのが下元哲監督の『襦袢未亡人 白い蜜肌』(1999年公開)だね。
『襦袢未亡人 白い蜜肌』ポスター
※エクセス動画にて配信中!
佐倉:これも大変でしたね。寒くって。
工藤:2月公開だから、真冬の撮影だったんだね。これ、下元さんが監督だけど、カメラもやってるのかな?
佐倉:そうです。監督と撮影を。
工藤:すごく映像の綺麗な作品だったよね。
佐倉:ええ。主演が桜沢菜々子さんでしたっけ?
工藤:そうだね。
桜沢菜々子『襦袢未亡人 白い蜜肌』現場スチール
『襦袢未亡人 白い蜜肌』現場スチール
『襦袢未亡人 白い蜜肌』現場スチール
佐倉:桜沢さん髪型のヘアセットと、和服の着付けを現場で私がやりながらの撮影だったんです。
工藤:桜沢さんって綺麗な女優さんではあったけど、演技はそんなにやったことなかったのかな?
佐倉:AV以外では無かったと思います。東北訛りのあるかたでした。
工藤:そうだったんだね。
佐倉:このお仕事は、だいぶ早めにオファーを頂いたんですが、下元監督との打ちあわせは、撮影までにどれだけ腋毛を伸ばせるかだったんです。どれだけ伸ばせるかと言われても(笑)。たぶん、3週間前くらいにオファーをもらったのかな?で、今から出来るだけ頑張って伸ばしますって。
工藤:腋毛か。そういう狙いがあったんだね。
佐倉:ええ。当時、AVに出演してる方だと永久脱毛してる方が多かったんで、「脱毛してる?」って聞かれて「いえ、いえ、そんな、脱毛なんてしませんよ」って(笑)。やっぱり、腋毛も商品だから、いつでも生やせるようにしてましたね、当時は。あと、必要以上に抜かないとか。でも、それ以降、腋毛を見せてる作品ってあまりないですけど(笑)。いつも、心の準備は出来てました。
工藤:その意識の高さは凄いね。
佐倉:下元さんはカメラを回しながらの監督だったんですけど。わたしも、自分が出演していないシーンも全部立ち会いました。
工藤:桜沢さんの、面倒も見なきゃならなかった訳だものね。
佐倉:桜沢さんは、髪につけ毛をしていたんで、カラミで激しく頭を振るとつけ毛がとれちゃうんです。それで、一々セットし直したりとか、着物の着崩れの乱し方を変えたりとかしていたんですけど、いざ本番になって「あそこバレが見えましたよね」というと、「いいんだよ、そんなのボカシを入れりゃいんだから、回せ回せ」って。それで、「ああ、そういう監督なんだな」と。それまでは、バレたらカットと思っていたので。
『襦袢未亡人 白い蜜肌』現場スチール
『襦袢未亡人 白い蜜肌』現場スチール
『襦袢未亡人 白い蜜肌』現場スチール
工藤:そうだね。フィルムの時は、バレたら、そこまで使って、そこからアングルを変えて別カットで撮るというのが良くあるよね。
佐倉:下元監督は、バレたらバレたで、編集で何とかするから、ドンドン撮っていこうとするタイプでしたね。「ああ、そういうやり方もあるんだ」って。
工藤:現場の勢い重視というかね。それもアリだよね。ボカシはねえ。フィルムの時はオプチカルになるので、お金の問題で1作品3回までとか言われていたような気がするなあ。だから、ボカシは何回も出来なかったとは思うけどね。
佐倉:後は、あらかじめレンズの一部を曇らせておくとか。
工藤:そうだね、レンズに直接グリースを塗ったりとか、色んな手があったね。
佐倉:(他の現場では)最初から写す狙いで撮ったりとかもしましたけど、この時はそういう事はせず、ひたすら回してましたよね。
『襦袢未亡人 白い蜜肌』現場スチール
工藤:下元さんのカメラワークは素晴らしよね。
佐倉:(カメラマンとして)Vシネマとかでもお仕事を一緒にする事があったんですけど、やっぱり監督よりグイグイ来るんですよね、要求してくるというか。
工藤:ああ、そうなんだ。
佐倉:別に言葉ではないんですけど、グイグイ来るんで、こっちも「やってやる!」みたいな感じで。何か闘争心が沸いてくるというか、下元さんに撮られてると。
工藤:そうか、カメラマンとしてもそんな感じなんだね。
佐倉:そうですねえ。
【3.先輩女優の存在感】
工藤:その次の作品なんだけど、『社宅妻暴行 白いしたたり』(監督 北沢幸雄、2000年公開)だね。
『社宅妻暴行 白いしたたり』ポスター
※エクセス動画にて配信中!
佐倉:佐々木麻由子さんが主演でしたっけ?
工藤:ああ、そうだね。麻由子さんだね。麻由子さんと工藤翔子さんが出てるね。佐々木麻由子さんとか、工藤翔子さんとかは以前に共演してたの?
佐倉:いえ、これが初めてでしたね。佐々木麻由子さんは、「何でこの人がピンク映画に出ちゃうの?」ってくらい麗しくって。
工藤:うん。
佐々木麻由子『社宅妻暴行 白いしたたり』ポスター用スチールの別カット
佐倉:「もしかして騙されて出てません?」みたいに思うくらい、抜群に綺麗でしたよね、雰囲気もあるし。
工藤:そうだよね。
佐倉:工藤翔子さんは、国映関係の打ち上げでお会いしてて、新宿区役所近くのお店にも行ってたので、面識はありましたけど、半分怖い先輩みたいなイメージもあったんですよ。
工藤:なるほど。
工藤翔子『社宅妻暴行 白いしたたり』現場スチール
佐倉:翔子さんが出演された作品も何本も見ていたんで、共演できて嬉しかったですね。
工藤:うん、うん。
佐倉:私、けっこうこの作品ではチャーミングに撮られていて。この作品の私は、自分でも凄く好きなんです。この作品は幸薄い系じゃなくて小悪魔系で。相手役が千葉誠樹(俳優 1968~)さんかな。千葉さんが後に「あの時の佐倉は良かったね」と言ってくれました。主婦の井戸端会議のシーンが出てくるんですよね。
佐倉萌『社宅妻暴行 白いしたたり』より
『社宅妻暴行 白いしたたり』より
『社宅妻暴行 白いしたたり』より
工藤:そうそう。普通の作品より、けっこうたくさん女優さんが出てて、豪華版だった。団地の話だから、奥さんが大勢出てくるんだよね。ところでさあ、ピンク映画に常に出ているような常連の女優さんがいるじゃない。その中で、上下関係みたいなものはあるの?
佐倉:そうですねえ、佐々木基子さん、基子ねえは、『雷魚』のすぐ後に出たVシネでご一緒して以来のお付き合いなんですけど、母であり、姉でありみたいな感じです。
佐々木基子 『女刑務官 美肉狩り』監督 坂本太 現場スチール
工藤:ほう。
佐倉:里見瑤子ちゃんとは、私がキャスティング事務所でバイトしてた時期に知り合って。
工藤:里見さんは、私の『ハイヒールの女 赤い欲情』(公開2000年 監督 工藤雅典)にも出てくれているよ。
里見瑤子、なかみつせいじ『ハイヒールの女 赤い欲情』より
※エクセス動画にて配信中!
里見瑤子『ハイヒールの女 赤い欲情』より
※エクセス動画にて配信中!
佐倉:私が里見ちゃんを衣装合わせに連れて行ったりとか、マネージャー的な事をしていた時期がちょっとだけあったんですよ。そのうち彼女はそこからみるみる内に人気が出て。
次回、第5回『エクセスで初監督!!そして、さらなる前進!!!』では、しのざきさとみ、小川真実、と共に女優3人で監督したオムニバス映画『人妻不倫痴態 義母・未亡人・不倫妻』と、その後のエクセス作品での林由美香との共演など、撮影秘話の数々が語られます。乞うご期待!!
佐倉萌さんの監督作品『箱』が、2022年度ゆうばり国際ファンタスティック映画祭 ゆうばりチョイス部門で初公開されました。近日都内で上映会開催予定です。
写 『箱』現場スチール
佐倉萌さんは、10月に東京、名古屋、大阪で朗読劇を開催予定です。こちらもお楽しみに!!