製作：ネクストワン／提供：Xces Film／監督：瀧島弘義／脚本：五藤利弘・瀧島弘義1999『公衆便所 私いたずらされました』より／撮影：林誠／照明：多摩三郎／音楽：齋藤慎一／編集：冨田伸子／助監督：羽生研司／メイク：おかもと技粧／スチール：本田アキラ／録音：日活撮影所／現像：東映ラボテック
◆キャスト◆
ミキ：森本みう／みどり：嶋田いち子／高木彩乃：吉行由実／男：佐野和宏／玉城先生：森羅万象／辻編集長：浮部文雄／荒井：坂井康浩
◆解説◆
さあ、皆さんは公衆便所と聞くと、どんな場所をお思いですか？一昔前なら汚い、落書き有り、臭い、と糞尿まみれの駅や、公園の便所が頭に浮かぶのでは？そんな場所で個室に入り用を足している時に、暗闇から足音が近付いてくるとビックリ。悪戯される！とくだらない事を考えてしまうのは、イケナイことですか？ 今では、そんな妄想もフッ飛んでしまうぐらい、総大理石の豪華なトイレ、ドライヤー付き、パウダールーム付き、ストッキングの履き替え台あり、と女性には嬉しい設備が備え付けられている。壁も便器もピンクで暖かいイメージで、汚い、臭いから綺麗で落ち着ける空間になっていることを、皆さんはご存じですか？ 便所の個室、という唯一プライベートの場所で何かが起こる！ 淫靡な響きが漂う空間の中で、主演のグラビアクィーン森本みうが監督瀧島弘義の手により、ロマンスを昇華させる。乞う、ご期待下さい！
◆ストーリー◆
ある公衆便所。人気のない空間で長身の女が手を洗っている。そこに、女子校生のミドリが入ってくる。ミドリは頭上に人の気配を感じ、天を仰ぐが誰もいない。蛍光灯が眩しい。もう一度見上げる…と、長身の女…いや、女装の男が覗いていた。恐ろしくて声も上げられないミドリは、扉を必死に押さえて抵抗するが簡単に侵入してくる。恐怖に歪んだミドリの唇を奪い、下半身をまさぐる。
女装の男は勝利を感謝するかのように天を仰ぐ。その後ろ姿に悪の色気が漂っていた。
新進作家の綾乃は、編集者の掘野が読んでいた原稿を取り上げる。
「…こんな具合に始まるの」と、綾乃はタバコを吹かす。ある日、ある空聞で私に取り憑いた男とのロマンスを昇華させたいと言う。私の野望は世界の人々から愛される人物になりたい。永遠に私だけを見つめてほしい。しかし、何かが足りない現在が怖い。毎日が自分自身の未来に恐怖している。私の場合、官能小説という私の作った世界で、女の欲情、欲望を満たし、小説の中の私はどこまでも可憐で愛おしい存在だった。当然、男も若くて素敵な人。この世界だけは誰にも侵す事は出来ないと…。小説の中で永遠を手にいれようとする綾乃だった。
マンションの部屋のノートパソコンで執筆中の私の元に携帯のベルが鳴る。「はい…玉城先生…わかりました。伺います」
ホテルのエントランスに停車するタクシーのドアが開き、中から小説界のヒロイン、ミキが降り立った。
ミキは玉城に文芸サロンの辻編集長を紹介された。少し離れて若い書生の荒井が控えている。玉城はスケベそうなほほ笑みを浮がべ「悪くないね…さあ、始めましょう」と、ワインをミキの体内に流し込む。そしてミキは嫌々体を開く。文壇の先生方という精液の匂いが漂ってきそうな老いぼれやら、編集者達。無気質なセックスこそ、無名作家の私が文壇での存在を確立する一つの行為だった。その日、私は二人の作家先生とプレイした。その三人のプレイを荒井のホームビデオが回している。
事後、壊れたように虚ろなミキと、マグロ状態の玉城と辻。鏡に写ったティッシュで股間を拭くミキを見る。と、そこには綾乃がいた。
綾乃はノートパソコンのモニタに文字を打ち込んでいく。
頭上にひしめく高層ビル群の光の中、帰途につくミキの日には、涙でぼやける光を写していた。ミキの足は心の隙間を埋めようと、あの公衆便所に向いていた。消えかけの蛍光灯の中、孤独にたえるミキの耳に女装の『男』の足音が響く。伏せた顔を上げ男の背中に飛び込んだ。「私を救って、泥沼から抜け出せない馬鹿な私を…」
時代遅れの朽ちたアパートで執筆中のミキの横には『男』が寝ている。私は自分の小説の中にいた。その『男』が欲しかった。私の小説の中の理想の『男』あの厚い胸板に抱かれたい。この地で二人は愛し合い永遠を手に入れるのだ。この世界の男は自分の女として空虚な心が作り出した産物だと…。私はあの公衆便所の一件から何かの虜となり、小説の中に存在するすべてのことに嫉妬しているのだ。と、その時携帯のベルが鳴る。「もしもし…荒井…どうしたの…』と突然立上がり窓を開くと、表には書生の荒井が携帯を耳に当てたまま立っていた。
綾乃が部屋から出てくると、廊下の隅に荒井が立っていた。何度連絡しても来ないので先生が心配していると…
書けば書くほど、ミキとあいつの関係が深まる。ミキを使って私のロマンスを昇華しょうとしているのに、ミキは一人歩きを始めている。私は自分の書いた小説の舞台に入ってきてしまって、どの様に書いて良いか分からなくなってきてしまっていた。とうとう、あの悪戯された空間でもある、公衆便所にやってきてしまった。私は一人でオナニーに耽ると私の分身であったはずのミキが完全に分離した。そして、私のロマンスでもある永遠の『男』までもがミキに奪われてしまった。
私は、自分自身の手であの男から私の永遠であるミキを取り返さねばならい。あの『男』をずっと待っているのに、あの『男』が私を迎えにこないのはミキのせいかもしれないと、私はミキに試練を与えることにした。
綾乃はノートパソコンに執筆していると、玉城からの呼び出しを携帯電話が知らせる。モニタにはミキの顔が映り、綾乃は自分から分裂したミキに向かって「ミキ、あなたは私の作る運命に逆らうことはできない」と…。
ホテルの一室では玉城、辻の作家がミキを囲んで晩餐会を開いている。チェアーに大股開きで縛られ性器には花を生けられる。口にも黒薔薇をくわえさせられている。作家たちは代わる代わる、被写体でもあるミキの姿をカメラに納める。「皆、君の文壇での成功に協力したと言っているんだとよ」と…。その屈辱に耐えるミキの姿は美しくもあった。
同じ頃アパートの『男』は、トレンチコートを着て、カツラを被り不敵な笑みを浮かべ行動を起こす。あの公衆便所で、『男』が入ってきた女の尻に手を当てスカートをズリ上げた瞬間、強制猥褻の現行犯で逮捕された。
「間違いありません。私、この人にいたずらされました」と女子枚生のミドリの姿があった。
ミキと私…私自身の分裂…結局、私はあの『男』に心までも悪戯されていたようだ。
そして私は、最高の結末を二人に用意した。
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