佐倉萌インタビュー『アンニュイでコケティッシュ ・佐倉萌のマルチな魅力』第5回

スキャン 1.jpg「愛くるしい瞳と、巨乳のミスマッチが男の下半身を奮い立たせる!」。エクセス作品『人妻淫乱恥態 義母・未亡人・不倫妻』の2010年改題公開時にエクセスのサイトに掲載された佐倉萌の宣伝文である。佐倉萌は、その“アンニュイでコケティッシュ”な魅力で長年、ピンク映画ファンを文字通り奮い立たせてきたが、一方、映画デビュー作『雷魚』の瀬々敬久監督をはじめ、黒沢清監督、渡邊孝義監督、クロード・ガニオン監督など作家性の強い監督の作品にも出演し、映画界に異彩を放っている。今回は、そんな佐倉萌にじっくりと話を聞き、その魅力の一端を解き明かしたい。   

インタビュアー 工藤雅典


第5回『エクセスで初監督!そして、さらなる前進!!』

【1.初監督作品】 

工藤:次はいよいよ監督作の話に入っていくんですけど、2001年の11月17日に公開された『人妻淫乱恥態 義母・未亡人・不倫妻』これが、初監督作品という事になるのかな?

佐倉:そうですね。   

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 『人妻淫乱恥態 義母・未亡人・不倫妻』ポスター
※エクセス動画にて配信中→
 

工藤:しのざきさとみさん、小川真実さん、そして佐倉さんと3人がそれぞれ自分の話に出演しての、3話の監督作品のオムニバスという事だね。

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 しのざきさとみ「第1話 義母」より

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 小川真実「第2話 未亡人」より

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 佐倉萌「第3話 不倫妻」より

佐倉:ええ。3人で出ている所は、私と真実さんで一緒に演出しました。

工藤:ああ、そうだったんだ。3人で一緒のシーンがあったね。

佐倉:はい。

工藤:これは、3姉妹の話だったよね。この企画は、どういう経緯で成立したのかな?

佐倉:これは、私が監督をしたいという気持ちがムクムクと湧き上がっている時で、コウワ(クリエイディブ)さんに相談したら、うちで最初に監督する時はオムニバスがスタートという事が決まりだからという事で。

工藤:へえ。そうなんだ。

佐倉:ええ。それでこの企画を組んでいただいて。脚本は有馬千世さんという方なんですけど。

工藤:この有馬さんというのはどういう人なの?

佐倉:それが、謎なんです。

工藤:誰かのペンネームだったのかな?じゃあ、脚本作りには絡んでなくて、もう脚本が出来ていて、監督としては与えられた脚本から始まったわけだね。

佐倉:そうそう、そうなんです。

工藤:じゃあ、プロデュサーの高橋講和さんと、脚本家とエクセス側とで、企画ものとしてあらかじめ本作りが進んでいたという事だね。

佐倉:そうなんです。現場に坂本太監督とかについていただいて。

工藤:後見人がいたんだね(笑)。

佐倉:そうそう、後見人が(笑)。でもねえ、内緒なんですけど(しのざき)さとみ姉さんのパートは、坂本監督が演出したのかな。

工藤:そう(笑)。

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 しのざきさとみ

佐倉:でも、(小川)真実さんは、頑張って監督してたのは覚えてますね。凄くやる気満々だったので。私も、絵コンテを書いていって、それを壁に貼って、「これで行きます。お願いします!」みたいな。

工藤:そうなんだ。

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 小川真実

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 佐倉萌

佐倉:この作品で凄く印象に残っているのは、相手役のしらとまさひさ君とラブホテルで撮影したシーンで、シーツ越しにフェラチオするとシーツに口紅の跡がついてるのがあって、あれは名案だったなと(笑)。

工藤:それは佐倉さんの演出だったんだね?

佐倉:そうです。どうしてもやりたかったんです。あれ、どこかでまた使えないかなって思ってます。

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 『人妻淫乱恥態 義母・未亡人・不倫妻』より

工藤:それって、下に張型を仕込んで、しゃぶるの?

佐倉:そうです。一戦終わって帰り支度をした後に、もう一回しゃぶって跡を残すみたいな設定でした。

工藤:しらと君は私の映画にも出てくれた事があるけど(2003年公開『寝乱れ義母 夫の帰る前に…』)、アイドルっぽいというか…。

佐倉:ちょっとプリンスっぱい男前ですよね。

工藤:それを、熟女3人が(笑)。

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 しらとまさひさ『人妻淫乱恥態 義母・未亡人・不倫妻』より

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 『人妻淫乱恥態 義母・未亡人・不倫妻』より

佐倉:そう、熟女3人が。しらと君は大変だったと思いますけど(笑)。それで、私の暴力夫が岡田智弘さんかな。

工藤:これもひどい夫だったね(笑)。本には絡んでないかもしれないけど、映画は女性目線の作品だったよね。

佐倉:割とホッコリするシーンもありますよね。鬼子母神社で撮影したんですけど、お参りのシーンを、良い雰囲気で撮れたと思います。

工藤:そうそう、楽しい感じで撮れてたね。

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 『人妻淫乱恥態 義母・未亡人・不倫妻』より

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 『人妻淫乱恥態 義母・未亡人・不倫妻』より

佐倉:アフレコが終わって翌日に生音の録音が(シネキャビンで)あったんですけど、それも手伝いに行きました。

工藤:そうなんだ、生音は助監督が時々手伝いに行くけど監督はあまり行かないよね。

佐倉:私が監督した時は、全部お手伝いに行きましたね。

工藤:これは、やっぱり三日撮りだったの?

佐倉:そうです。一人一日で、しのざきさんのパートの撮影日だけ、三人で集まるシーンが含まれるという感じだったと思います。

工藤:監督3人で打ち合わせる機会とかはあったの?

佐倉:私は真実さんとは打ち合わせをした記憶があるんですけど、しのざきさんとは…。

工藤:しのざきさんは「良きに計らえ」的な感じだったのかな?(笑)

佐倉:そうですね(笑)。これのアフレコが終わって、シネキャビンの中村さん(録音技師)に近くのカラオケ・スナックに連れて行ってもらったんですけど、そこで真実さんがね、ちあきなおみさんの『赤とんぼ』とか歌うんですけど、それがメッチャ上手いんですよね。「ああカッコイイ。女優はやっぱり演歌よね」と思って(笑)。小川真実さんは凄く女優らしい女優さんという感じがして。で、私の(監督)三本目の作品にも絶対出演してもらいといと思ったんです。

工藤:ああ、出てますね。

佐倉:しのざきさんももちろん、本当に“姐さん”という感じなんですけど、真実さんは、カッコ良かったんですよね。

工藤:ああ、確かに男っぽいというか…。

佐倉:パリっとして、粋な感じというか。

工藤:確かに、気っ風の良い姉御肌みたいな、ところがあるよね。この3人の人選というのは誰だったんだろうね?

佐倉:やっぱりプロデューサーの高橋講和さんでしょうね。

工藤:この映画の評判はどうだったんですか?

佐倉:良かったですよ。面白かったって。でも、「明らかにしのざきさんは撮ってないっていうのは分かるけど」って(笑)。「私にしろ、真実さんにしろ努力の跡が見える」と(笑)。

工藤:しのざきさんには、先にインタビューしてるんだけど、本人が言ってましたよ、実際には、あまり監督はしてないって。

佐倉:やっぱり(笑)。

工藤:まあ、そこは、現場スタッフがカバーしたんだろうね。でも、浜野佐知監督や吉行由美監督がいたとはいえ、まだまだ、女性がピンクを撮るのは大変な時代だったよね。

 

【2.林由美香との共演】

工藤:次の監督作の前に、また何本かエクセス作品に出てますよね。

佐倉:新田組ですよ。楽しかったんですよ、新田組。

工藤:ああ、そうですか。2001年公開の『熟女温泉女将 うまのり』。凄い題名だね(笑)。これは、どんな映画だったんですか?

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 『熟女温泉女将 うまのり』ポスター
エクセス動画にて配信中 →

佐倉:出演が仁科夕希さんと林由美香さんで、私が由美香さんの元同僚か同級生の役。由美香さんが温泉で女将をやってると聞いて、そこに泊まりに行ったら実は由美香さんは女将じゃないんですけど、それを察した本当の女将の仁科さんが、由美香さんを立てて女将さんに見せかけるみたいなお話だったと思うんですけど。

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 仁科夕希『熟女温泉女将 うまのり』現場スチール

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 仁科夕希『熟女温泉女将 うまのり』より

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 林由美香『熟女温泉女将 うまのり』より

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 林由美香『熟女温泉女将 うまのり』現場スチール

工藤:林由美香さんとは、初めての共演ですか?

佐倉:以前に同じ吉行組には出てましたけど、お芝居が絡むのはこの作品だけですね。

工藤:後で、話を聞くことになると思いますが、一時期ピンク映画を離れた時期があって、そのきっかけが林由美香さんが、若くして亡くなった事が原因だという事ですけど、この時の林由美香さんの印象は?

佐倉:“カワイイ”ですね。何か、一つ一つがチャーミングなんですよ。ブータレた顔をしていても、無茶苦茶かわいくて。荒木太郎監督がよく言ってたんですけど、私と由美香ちゃんは姉妹役でいけるって、二人ともブータレ方が似てるって(笑)。

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 佐倉萌と林由美香

工藤:この後は、何本も共演したの?

佐倉:いえ、共演はしてないんですが、荒木組で自主映画を撮った時に、フィルムを福岡の劇場に運ぶ為に由美香さん他数名で車で行った事があり、その時京都で一泊しました。

工藤:ああ、そうなんだ。

佐倉:けっこう、その時に由美香さんに人生を語っていただいて(笑)。まあ、二人っきりでじっくり話す機会があったので、特別な存在になりましたよね。

工藤:それは、どんなお話だったんですか?

佐倉:やっぱり、自分自身が擦り切れちゃいけないという事ですかね。もちろん業界の話もあるんですけど、京都の祇園の鴨川べりを夜ホテルに帰る途中二人で歩きながらじっくり話したことがあって。

工藤:影響を受けたんだね。

佐倉:ええ。

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 林由美香『熟女温泉女将 うまのり』より

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 佐倉萌『熟女温泉女将 うまのり』より

工藤:由美香さんの女優論とか、そういうのはあった?

佐倉:ノーギャラでは仕事を引き受けない。

工藤:えっ、そう。

佐倉:1円でも良いから、女優として出るならギャラは貰いなさいと。

工藤:プロとしての女優の生き方という事だね。

佐倉:周りに良い顔ばっかりして、ボランティア、ボランティアとか言うんじゃなくて、仮にもお芝居をしてご飯を食べてるんなら、少しでも良いから、ノーギャラじゃなくて、ギャラは貰いなさいって、言われた事がありましたね。

工藤:大切だね。

佐倉:大切ですね。

 

【3.助監督時代の監督たち】

工藤:この作品だったっけ?何か、温泉でトラブルがあったって。

佐倉:そうですね。埼玉の奥の方で撮ってたら、「トゥナイト」の取材で、山本晋也監督が来て、ピンク映画を撮ってるとバレちゃって。岡さんが機転を利かせて、急遽、熱川の方の旅館をとって、夜中に車で大移動したという。

工藤:山本晋也監督がこの作品の取材に来てくれたってこと?

佐倉:たぶん、新田監督の取材だったんじゃないですか。

工藤:なるほどね。「トゥナイト」は、よくそう言う取材をしてくれてたよね。ありがたいと言えばありがたいんだけど、大移動は大変だったね。

佐倉:私は、直前で変更になって、直接熱川入りになったから大丈夫だったんですけど、他のスタッフ、キャストは大変だったでしょうね。

工藤:その後、もう一本出てますね。『尼寺の艶ごと 観音開き』(2002年4月19日公開、監督 新田栄)。

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 『尼寺の艶ごと 観音開き』ポスター

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 主演 君島真琴『尼寺の艶ごと 観音開き』現場スチール

佐倉:これは、農家のおばさん役でしたけど、新田組の良いのは、レギュラーメンバーのスタッフなんで、お昼ごはんで監督が食事をしてからマッタリしてると、予定の時間で次はカラミのシーンとかだと、現場では、監督が来ないうちに撮影が始まっちゃうんです(笑)。

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 佐倉萌『尼寺の艶ごと 観音開き』より

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 佐倉萌『尼寺の艶ごと 観音開き』現場スチール

工藤:ははは、そうなんだ。

佐倉:もう、監督のカット割りは分かってるからという事で。撮影が始まって、しばらくしてやっと監督がやって来るみたいな。

工藤:なるほどね。もう、これぞ“新田組”って感じだね。これは、加藤儀一君が助監督をやってるね。

佐倉:はい。加藤さんですね。この頃は、加藤さんとか、竹洞君とかが助監督をやってる組の仕事が多かったんです。

工藤:なるほど、そういう時期だね。

佐倉:この前の『出張和服妻 ノーパン白襦袢』にも加藤さんが付いてたんですけど、加藤さんと私の前張りを取る、取らない問題で、私の事を「なんてふてぶてしい女優だ」みたいな感じで大喧嘩して(笑)。

工藤:へえ、そうだったんだ(笑)。

佐倉:小林悟監督が亡くなる前の何本かの作品にアテレコで参加したんですけど、それにも加藤さんが付いていて、仕事終わりとか、打ち上げとかの居酒屋で大喧嘩(笑)。酔っぱらって大喧嘩しているところにたまたま居合わせた渡辺哲さん(俳優、1950~)が間に割って入って頂いた事がありました。

工藤:そうですか(笑)。

佐倉:でも、そこでぶつかれたから、加藤さんが監督デビューしてから気心を知ってる戦友というか、そういう関係になれたんだと思います。私の監督2本目の時かな、監督デビューがちょうど同じくらいだったんですよ。だから加藤さんの監督デビュー作の時に、私がアップして一日後だったのかな、応援で出演したりしましたもの。

工藤:いいねえ、そういう関係は。

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 『尼寺の艶ごと 観音開き』現場スチール

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 『尼寺の艶ごと 観音開き』現場スチール

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 『尼寺の艶ごと 観音開き』現場スチール

佐倉:新田組の『尼寺~』とかも、たぶん塩山とかで撮影したのかな。他の組でも塩山の旅館を使ってましたけど。

工藤:ロケ地として、有名な旅館だよね。

佐倉:撮影が終わるとみんなで、牡丹鍋を食べたりとか。

工藤:そういう“お楽しみ”があるわけだよね。撮影、頑張って早く終わらせて宴会やろうぜみたいなね。

佐倉:あともう雑魚寝ですよね。大体寝る場所は決まってるんですけど、撮影が早く終わった人から寝るとなるとバラバラで、もう襖が有って無いようなものになって。例えば、温泉の湯船の中でカラミがあると、そのまま絡んだ二人が一緒に湯船で温まって出てくるとか。

工藤:そうだね。そういう事もあるね。


次回、第6回『渾身の単独監督2作品!!』では、監督第2作目にして、初の単独監督映画『いじめる熟女たち 淫乱調教』と、監督第3作目『貪る年増たち サセ頃・シ盛り・ゴザ掻き』の撮影秘話の数々が語られます。乞うご期待!!

佐倉萌さんの最新映画出演情報です。主演の磯村勇斗さんの母親役で出演している映画「ビリーバーズ」(監督:城定秀夫)が全国の映画館でロングラン上映中。
こちらにも、ぜひご注目を!!