ピンクの炎 第3回『君は「しのざきさとみ」を知っているか?』女優 しのざきさとみさんに聞く その4「女優の男遍歴。彼氏にバレた秘密」
工藤:しのざきさん、ボーイフレンドとかは?
しのざき:高校生の頃は、すごく真っ当な、それこそ「美しい青春」みたいなボーイフレンドがいたんです。今思い出しても胸がキュンとするような。でも、その人とは別れて…。その後、「ひどい男」とつき合って、それで今に至るみたいな(笑)。
工藤:「ひどい男」ですか?
しのざき:次につき合った、初体験の相手が「ひどい人」だったんです。
工藤:そうですか、色々事情がありそうですね(笑)。ところで、家にピンクの出演がバレてしまったというのは、エクセスに出る前ですよね。バレた後も続けてる訳ですよね?
しのざき:バカですね(笑)。だから余計に、主役は避けたし、グラビアも週刊誌とか大きな会社のは断ってました。でも、美容院とかでも、週刊誌は置いてあるし、どこかでバレますよ。本当に浅はかでした。
工藤:当時はインターネットが無かったから、まだ良かったですよね。
しのざき:本当ですね。今なら、怖くてできません。
工藤:エクセスに出た93年は、池島組の他に新田組もやってますね。新田栄監督との仕事はいかがでした?
しのざき:新田組も多いんですよ。新田監督はエクセスだけじゃなくて、他の会社でもやってたでしょ?
工藤:そうですね。
しのざき:新田監督にも、たいへん可愛がってもらいました。新田監督は凄くせっかちなんですよ。
工藤:早撮りですよね。
しのざき:早撮りだし、何でも段取りが良いのです。
着替えの最中に「はい、移動!」とか…。早く早くと、急かされてましたね。でも私と似ているからか、言い方にカチンときても、全然嫌いになれないんです。新田組にも10本以上出ています。
工藤:新田組に出たきっかけは?
しのざき:やっぱり、池島さんに紹介されたのかな。今でも覚えてますけど、池袋の喫茶店で打ち合せしたんです。いきなり本を持ってきてくれて、早いんですよ。「じゃあ、この役で、この日に、この時間で」「はい、分かりました」それで、打ち合わせ終わりですよ。
工藤:ほう、早いな(笑)。
しのざき:私、そういう段取りが早いのが好きなんですよ。映画だけじゃなくてプライベートでも、タイトにスケジュールを入れるんです。 生き急いでるのか…(笑)。仕事と仕事の間に45分の電車の移動があるとすると、1時間しか間を空けないんです。だから電車が遅れると、凄くイライラするの。もっと余裕を持って仕事を受けると良いんですけど、2時間とか空くともうダメなんです。
工藤:中空きは、許さないと。
しのざき:映画の「待ち」は、平気なんです。全然イライラしません。「どうぞ、ごゆっくりやって下さい」と、思って台本を読み込んでます。
工藤:監督としては、それはありがたいですよね。
しのざき:だって、その時間は、何にも出来ないじゃないですか。ゆっくり待ってるか、本を読んでるかだけですからね。
工藤:1993年ですが、『いんらん巨乳母娘』の深町組、この辺が芝居に目覚めた作品でしょうか?
しのざき:そうですね。その頃が、充実している時でした。
工藤:この頃、やっと「目立ちたくない」という思いから、「自分を表現したい」という気持に変わってきたんですね。
しのざき:今でも、あまり目立ちたくない気持は変わらないんですけど、知り合いの評論家とかに「あれは、良かったね」とか「芝居が上手くなったね」とか「色っぽかったよ」、とか言われると、「やったーッ!」って。やっぱり、嬉しいですよね。その人たちは、棒読みでしか台詞を言えなかった私を知っている訳ですよ。それと、自分じゃない他人を演じる事の楽しさも分かってきたのが大きかったです。
工藤:94年から2000年くらいは、年に4、5本はコンスタントに出演していて、本当に充実した時期と言えますね。
しのざき:そうですね。楽しかったですね。一番ね。今でも、自分が芝居が下手だと言うのは十分、分かっていますが、自分なりの表現が出来るようにはなりました。
工藤:1996年に「コミック雑誌なんかいらない」という一般映画に出てますよね。この出演の経緯は?
しのざき:監督の滝田洋二郎さんが、初期の頃の深町組の助監督で、よく知っていたんです。あの人は、話し方がソフトで、現場で「痛くないよ」とか、「大変じゃないよ」とか騙されて色々やらされてました(笑)。監督になったのは知ってましたが、ある日滝田さんから急に電話がかかってきて、「出てね」って言うから、「はい」って。
工藤:滝田さんから、直接ですか?
しのざき:ええ。それで、「ワンシーン」だけで、台詞も「あんたって最低ね」と一言だって言うから、「ラッキー!」と思って、打ち合せもほとんど無く現場に行くと、内田裕也さんがいるからビックリしちゃった。
工藤:本は読んでなかったんですか?
しのざき:本は読んでなかったんじゃないかなぁ。だって、一般映画とも知らず…。知ってたら出なかったかもね。だから騙されたと思って(笑)。とても忙しい時期で、他の組の完徹明けで現場に行ったと思います。あの映画は見た人が多くて、美容院とかで、「見ましたよ」とか言われて、「えーっ、ウソ〜!」って。本当に、沢山の人から言われました。きちんと打ち合わせもせずに出演してしまったので…。反省です。
工藤:女優としては、一般映画に出られるのは嬉しいのでは?
しのざき:当時は、女優であることを隠してたので…。街中や飲み屋さんでも声をかけられちゃって、暫くは飲みに行くのも怖かったです。
工藤:そうですか。
しのざき:私は、声が低いでしょ。だから、声で気がつく人も多いみたいですね。お店とかで話してると、人が振り返ることもあります。
工藤:あの、映画の声の人だって?
しのざき:そうそう。顔バレもなんですけど、けっこう、声も覚えられちゃうみたいで、つき合ってた人に内緒でピンク映画に出演してたんですけど、ある日、時間つぶしにピンク映画館に入ったんですって。そしたら、声でバレちゃいました。私じゃないって言いましたが…。
工藤:いやいや、声だけじゃないでしょ(笑)。
しのざき:もちろん、体とかもそうなんだけど、映画だから、当てレコで声が違ったら、「似てるけど、違うのか」となるじゃないですか。でも、この体に、この声じゃ「間違いない」ってなりますよね。つき合ってたのは、一般映画も見る趣味が無かった人なので、まさかピンク映画を見るとは思いませんでした。たまたま帰りが遅くなって、タクシーがつかまらず、オールナイトの映画館に行ったそうです。入った瞬間に私の裸と声がドッと迫ってきたんですって。次の日電話がかかってきて、「知らない、私じゃない」って言ったんですけど、ダメでした。
工藤:それで、別れたんですか?
しのざき:結局はね。でも、すぐには別れてくれませんでしたね。私は「別れて」って言ったんですけど、「それと、これは別だ」って。「どう別なのょ」って思うでしょ。でも、それ以来、私に対する扱いが変わったんです。一段低く見ると言うか。ピンク女優風情が…みたいな。
工藤:そんな男はダメですね。
しのざき:別な人は、同じようにバレたんですけど、「ピンク女優とつき合えてラッキー」みたいな感じで、凄く喜んでましたね(笑)。
工藤:色んな男がいるもんですね(笑)。
しのざき:そう、2人にバレましたね(笑)。
工藤:何人つき合った内の2人ですか?
しのざき:少ないですよ。私は、1人の人と長いんで。「別れないでくれ」と言われると別れられない。
工藤:口説かれ弱いんですね。
しのざき:口説かれるのに弱いんじゃないんです。いくらでも、ハネつけられます。若い頃は、監督さんや脚本家の方にも口説かれるじゃないですか。道を歩いていたってナンパされますから、そんなの全部相手にしてたら大変ですよ。ただ、つき合ってからはね…。
その5「思い出の共演者。そして、ラストメッセージ」に続く